【修正】朝の重力とバカルディのグラス ―― 58歳、資産ゼロからの再武装

道路沿いの金網付近に咲く黄色い雑草。現場近くの公園にて。

毎朝、絶望感とともに目が覚める。

2号警備の現場に立ち、排気ガスと凍てつく底冷えに身をさらし、うまい具合に疲れ果てて眠りについたはずなのに、覚醒の瞬間、それは容赦なく始まる。

呼吸が浅い時は、絶望感がよりひどい。 胸の奥が詰まり、やり場のない、声にならない声を漏らす。 まぶたの裏には、故郷のあの道や、かつて歩いた見慣れた街角が不意に浮かんでくる。ああ、苦しい。

手のひらが強張り、上手く握れない。 手指の第二関節に走る、わずかな、しかし確かな痛み。 検査の結果、リウマチではないと言われた。ならばこの強張りは、この冬、未経験で飛び込んだ現場で、必死に誘導棒を握り続けてきたこの3ヶ月の「代償」なのだろうか。

答えなどどこにもない。そう薄々感じながらも、夜の静寂の中でYouTubeの海を漁り続けて出会ったのが「ジャーナリング」だった。 「書く瞑想」とは洒落た表現だが、俺にとっては藁をも掴む祈りに近かった。

埃をかぶったノートに、ただ気持ちを書き出す。 「誰か、助けて」 「お父さん、お母さん、ごめんなさい」

いい歳をした男が、深夜の部屋で、子供のように謝り続けている。 読み返す必要はない。ただ、内側の澱(おり)を紙の上に置き去りにする。ただ書くのみ。

そうして俺は、ようやく「30分後のトースター」へ向かうための空白を心に作る。

業務スーパーで買った6枚切りの食パンを焼き、かつてラムを注いでいたバカルディのグラスには、真っ赤な無塩トマトジュースと大さじ1杯のリンゴ酢を注ぐ。

ちょっとした緊張でも俺の血圧は容易に200を超える。寒風の中、常に最悪を想定し、世界を相手に一人で立っているかのような異常な緊張が血管を叩く。 この数値が110という穏やかな場所に戻るのは、仕事のない休日に、自宅で完全にリラックスできている時だけだ。

立ち上がるパンの香りと、喉を刺す酢の酸味。 外での「戦時」と、家での「平時」。 この危ういバランスを、食事と精神管理で繋ぎ止めていく。

これが、資産ゼロ、58歳、路上の警備員として生き抜く俺の、静かな開戦の合図だ。

さて、現場へ行くか。

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この記事を書いた人

【絶望2号警備員 Shoku-Shoku-Shi】

58歳、新人2号警備員。米大卒、資産ゼロ、家族とは疎遠。 父の死に空を埋めた鳥の大群。その情景を胸に、今も路上に立っている。

行政書士、宅建士、指導教(4号)合格。 支配するのは、上200の血圧(白衣)と糖尿病の警鐘。 衰え、壊れ、緊張に怯える肉体と精神。

これは絶望の淵で己の「機嫌」を取り、呼吸する男の生存記録である。

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