shoku-shoku-shi– Author –
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【現場】アラ還2号警備員の生存報告
【安寧】生温い沼(同化への恐怖)
現場は品川の閑静な住宅街だった。高台に並ぶ邸宅の合間を、冬の湿った風が吹き抜ける。目の前を、ベンツやポルシェ、黒塗りのアルファードといった高級車が静かに通り過ぎていく。この高台に住まう者たちの豊かさと、地べたに立つ俺の現実。その鮮明すぎ... -
【現場】アラ還2号警備員の生存報告
【帰還】深夜の独走
夜勤は電車の始発すら遠い時刻に終わることがある。静寂が支配する街から、自力で脱出するための唯一の手段、それがレンタル自転車だ。それはもはや都市の新しいインフラといっても良いサービスだ。その中で俺は、赤チャリで名を馳せた「バイクシェア」と... -
【現場】アラ還2号警備員の生存報告
【虚像】サボり(という名の精神的腐食)
810kHz。 チューニングを合わせたラジオから流れてくるのは、湿り気のない、乾いたアメリカの風だ。 AFNから溢れ出すハイテンションなDJの英語と、最新のビルボードチャート。それを飽和して虚無に変わるまで聴き続けていた。誰にも悟られぬよう、イヤホン... -
【技】アラ還の武装 ー 資格等での生存戦略
【咆哮】50代、何者でもない俺が「コッカシカク」を欲した理由
第1話で「防弾チョッキ」の代金を支払う決意をした俺が、次に直面したのは、50代という肉体の衰えと、独学者が必ず陥る「教科書選び」という名の疑心暗鬼、そして逃げ場のない孤独だった。 2020年12月27日。日曜日。街は、クリスマスの残骸を片付ける間も... -
【現場】アラ還2号警備員の生存報告
【矜持】待つのも仕事。現場という名の「空白」
そこは、俺の住処から歩いて行ける距離にある、稀な現場だった。 だが、直線距離で2キロをわずかに超えるその道のりを、俺はあえて電車賃として経費に計上する。微々たる額だが、これもまた「生存戦略」のひとつだ。「まあ、いいやね。みんなそうしてるし... -
【生】アラ還の「ご機嫌」メンテナンス
【漂流】ぬるいスープ
「スープは、熱い方がいいんだ……」 目の前に鎮座する、脂の浮いた褐色の海。これが、ラーメンなんだ。食べたかった、ラーメン。だが、スープは熱くなかった…。 内科医から突きつけられた「塩分、揚げ物はほどほどに。ごはんやパンとかの主食は今までの半分... -
【技】アラ還の武装 ー 資格等での生存戦略
【断罪】宅建士合格への供物――独学という名の孤独な防弾チョッキ
2020年5月29日。あの日、世界はコロナという名の死神に首を絞められ、俺の部屋の空気も、澱んだ湿気とともにただ重く、動かぬまま固まっていた。 「宅建を取る。4万円の通信講座を始める」 知人が吐き出したその言葉は、俺の空っぽな胃袋に小石を投げ込ん... -
【現場】アラ還2号警備員の生存報告
【修正】朝の重力とバカルディのグラス ―― 58歳、資産ゼロからの再武装
毎朝、絶望感とともに目が覚める。 2号警備の現場に立ち、排気ガスと凍てつく底冷えに身をさらし、うまい具合に疲れ果てて眠りについたはずなのに、覚醒の瞬間、それは容赦なく始まる。 呼吸が浅い時は、絶望感がよりひどい。 胸の奥が詰まり、やり場のな...
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