【覚悟】アラ還の仕事探し体験記:採用から現場配属までの実際

夜の品川区荏原、栄通り交差点の風景。ビルの灯が、静まり返った夜の街並みを照らす。

1. 媒体選びと応募の背景

仕事探しには『バイトル』を中心に、複数のアプリや無料情報誌『イーアイデム』を参考にした。年齢(アラ還)、手に職がない、そして運転免許はあれど運転は上手くない(配送ドライバーやタクシー運転手は当初から断念)という背景があった。

約30年、独りで事業をしていたが、事情があって撤退した。いずれ何らかの形で個人事業を再開し、雇用される仕事と掛け持ちで生活していきたい。それが俺の描いた再起への兵站だった。

性格上、介護や清掃はむつかしいと感じ、残ったのは警備。施設(1号)か交通誘導(2号)かの選択では、研修後すぐに働け、身元保証人が要らない2号警備を選んだ。どこも「日給制」「入社祝い金あり」「WワークOK」「シフト提出1週間前」など、条件は似たり寄ったりだった。

2. 4日間の研修スタート:即席兵士の製造工程

研修は4日間。初日にいきなり制服を着せられ、写真を撮られる。そこで出来上がるのは、昨日までの自分を塗り潰した、名もなき警備員の身分証だ。

【研修の手厚さとルーズさ】

金銭面では手厚い。研修中も手当が出て、昼食代と交通費、さらには公的書類の取得費用まで会社が持つ。入社祝い金が分割なのは、受給直後のドロンを防ぐためだろう。 だが、その環境はルーズだ。一斉研修ではなく、各自のスケジュールで法定教育時間をこなしていく。そのため、ビデオ視聴のタイミングが被り、同じビデオを複数回見るような非効率な場面もあった。

3. 研修内容の実態:形骸化した実技と矛盾

座学は形ばかりで、内容はかなり大まかな印象を受けた。交通費精算の報告書記載要領などの事務手続きや健康診断に、研修時間が溶けていく。

【おままごとの実技】

誘導棒や手旗の使い方は、席を立ってその場で行うだけのもの。このAIの時代、片側交互通行や歩行者誘導のシミュレーションくらい可能なはずだが、そんなものは一切なかった。

【教典 of バグ】

教官は「右手は白、左手は赤」と手旗の持ち方を説くが、教材のビデオでは左右が逆になっている。また、ビデオに髭面の男性が出演していたが、これは「おひげさん」でも就業して良いというメッセージだろう。

【身辺の洗浄】

身元保証人が立てられない事情があっても、緊急連絡先さえあれば潜り込める。それが2号警備という業界の「懐の深さ」であり、危うさでもある。会社側はそこへ過去の警察沙汰の有無を確認していた。

4. 支社の選択と仲間たち:刹那の学生気分

生徒はやはり、人生の後半戦を戦う中高年が多い。元公務員や警備経験者との雑談は楽しく、久しぶりの学生気分を味わえた。最終日には若い女性もおり、ネイルについて教官に指摘されていたが、教官の間で指導内容が食い違う場面も見受けられた。 研修最終日、同じ支社を選んだ男性と一緒に支社へ向かい、そこで初めて具体的な就業説明を受けた。彼は元アウトドア関係の会社員だった。後に彼と現場で再会した際、彼は「1号」と「2号」を兼務しており、天候に左右されない1号と、繁忙期の差が激しい2号を組み合わせる彼なりのダブルワーク術を語っていた。

5. 嘘と初陣:片交(かたこう)という名の洗礼

勤務形態(夜勤・日勤)を問われ、俺は「未定」と回答した。両方の現場を知るべきだという判断は、後に正解だったと確信する。 「最初の2ヶ月は片交(片側交互通行)はない」という教官の綺麗事は、11月の風に吹かれ、目の前を通り過ぎる車両の排気ガスを浴びた瞬間に消し飛んだ。配属初日、目の前にあったのは絡み合う車両の列。いきなりの片交だ。これが現実だ。 だが、俺はこの過酷なスタートを正解だと思っている。 初勤務の相勤者、MUさんの言葉――「片交から逃げてはいけない。ずっと逃げてる奴は何年も肩身のせまい思いをする」。 そして、ある女性隊員が漏らした「あの人は片交ができないから……」という冷ややかな噂話。 交通誘導員にとって、片交が自分の居場所を確保するための、絶対的な技術なのだと骨身に染みた。

以上、アラ還で2号警備員の選択を考えている諸兄の参考になれば幸いである。

工事現場手前の道路に設置された『片側交互通行』の案内看板。通行車両へ注意を促す、オレンジ色と黒の警戒標識の風景。

#注釈:警備業法に基づく教育制度について

本記事で触れた「4日間の研修」および「研修内容」については、以下の法的根拠に基づいています。

***新任教育の時間数(警備業法施行規則第38条)***

    新たに警備業務に従事させようとする警備員に対しては、合計20時間以上の「新任教育」を行うことが義務付けられています(※令和元年の法改正により、従来の30時間から現在の時間数に短縮・緩和されました)。

***教育の実施義務(警備業法第21条)***

    警備業者は、警備員に対し、業務を適正に実施させるための教育、指導、および監督を行う義務があります。

***身元確認の根拠(警備業法第14条)***

    警備業法では「18歳未満」や「アルコール・薬物中毒者」「反社会的勢力との関わりがある者」「直近5年以内に警備業法に違反した者」などを欠格事由として定めており、採用時の身辺確認はこれらに抵触しないかを判断するために行われます。

***2号警備の定義(警備業法第2条第1項第2号)***

    人若しくは車両の通行に危険がある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(交通誘導警備・雑踏警備)を指します。

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この記事を書いた人

【絶望2号警備員 Shoku-Shoku-Shi】

58歳、新人2号警備員。米大卒、資産ゼロ、家族とは疎遠。 父の死に空を埋めた鳥の大群。その情景を胸に、今も路上に立っている。

行政書士、宅建士、指導教(4号)合格。 支配するのは、上200の血圧(白衣)と糖尿病の警鐘。 衰え、壊れ、緊張に怯える肉体と精神。

これは絶望の淵で己の「機嫌」を取り、呼吸する男の生存記録である。

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